製造業のサービス化 日立の英国鉄道ビジネス

製造業のサービス化の事例として日立の英国鉄道ビジネスを紹介します。
1993年 British Railの民営化によって、鉄道事業の上下分離方式による運営がスタート。以下のような分離が行われた。
  • インフラ:軌道・信号管理 1社が一括管理 Rail Track社(破綻) → Network Rail社 
  • 運営:列車運行管理 TOCs(Train Operation Corp, 20数社, ATOCに加入, National Railブランドで運行)
  • 車両資産:銀行系リース会社が車両を保有。TOCにリース。
  • 車両:車両メーカーが車両+保守事業をリース会社に収める
1999年に起きたラドブルック・グローブでの列車の正面衝突等が契機となり、安全性などへの投資不足が明確化、民営化の失敗が議論される中、英国運輸省主導で鉄道の再生かプランが始まり、日本の鉄道に注目が集まった。
1999年に ビジネス(車両が軽量、路線使用量の低下)および技術力(安全性)の優位性から、英国に駐在員を派遣、日立で交通プロジェクトが立ち上がった。
2004年、リース会社と協力、英国での車両運行の安全性を示し、2005年 英国高速車両の受注正式調印。保守管理・点検サービスへもビジネス拡大していった。
2012年には、PPP案件として英国都市間高速鉄道を契約、官民一体となったパッケージ型インフラ海外展開の第1号案件となった。その間、2009年にはレール会社、ファイナンス事業、その後英国での製造拠点を立ち上げた。英国での車両保守オペレーションだけではなく、運行管理システムの英国全国展開を目指している。
車両メーカーから、保守、運営、「鉄道のトータルソリューションプロバイダー」に成長していく。今後アジアへの展開も視野に入れ拡大する。
講演者の鈴木さんは、「ビジネスモデルの変化が、イノベーションの引き金」であると。例として、異業種連携(メーカーとオペレーター)、サステナビリティ、フローからストックへ(車両寿命によるビジネス展開)、ファイナンシャルスキーム(PPPへの挑戦)
製造業のサービス化の素晴らしい事例をご紹介いただきました。

参照として、その間の企業の変遷を示します。
ミッション 企業理念:優れた自主技術・製品開発を通じて社会に貢献する
日立創業の精神:和・誠・開拓者精神
日立グループ・ビジョン:日立は、社会が直面する課題にイノベーションで応えます。優れたチームワークとグローバル市場での豊富な経験によって、活気あふれる世界をめざします
2009年 カンパニー制を導入
2012年 カンパニーを束ねるグループ導入:インフラシステム(インフラシステム社、交通システム社、都市開発システム社)
2014年 現在のグループ:ヘルスケア、インフラシステム(交通システム社含む)、情報・通信システム、電力システム
交通システム社 事業目標:国内で培った鉄道事業の安全・安定輸送を支える技術のグローバル展開加速
株式会社 日立製作所 (ref: http://www.hitachi.co.jp/)

QAででてきたお話
日本で行われているすり合わせに対して、英国での標準パーツとそのチューニング。それによってものの作り方が豊かになったと。車両ビジネスは、その後の30年の保守で儲ける形になってきており、技術、サポート+サービスがベース。
サービスに関しては、英国と日本での違いもあります。例えば、英国では、列車の遅延に関するペナルティがない。一方、日本では30分以上の遅れがあると国交省に報告。日本の正確な運用システム(ATOS)は素晴らしいが、文化が異なるうえに金額で折り合わない。
2009年にJBIC(国際協力銀行)が、制度改正をし、開発途上国だけではなく、その他の海外へ間口を広げたことも、ファイナンス事業へ進むきっかけっとなった。
英国では、運用会社が分かれているが、その情報を一括して示すサービスTrainLinkがある。それを参照して、新しい列車の導入、メンテナンスなど実施。
今朝のニュースでは、日立が鉱山へ進出など、インフラ企業としてますます発展してきています。目が離せません。