サービスとは、サービス・サイエンスとは

まずサービスの定義について考えよう。今までのサービスの定義をみてみると、

  • 行為、行動、生産性 (Berry, 1980)


  • 行為、プロセス、生産性 (Zeithaml and Bitner, 1996)


  • 顧客の問題に対する解決策として提供される一連の行為 (Gronroos,1990) 


  • 成果物が製品あるいは構造物でないすべての経済活動 (Brian et al,1987)


  • 無形であり、しかも保存できない、作られると同時に使われるもの (Sasser et al, 1978)


  • 協同生産者である顧客のために行われる、保存できない、無形の行為 (Fitzsimmons, 2001)


  • 他によってもたらせる経済活動の実現主体の状態の変化 (Hill, 1977)






  • これらからサービスは行為であり、プロセスであると理解されていることがうかがえる。また、サービスの特徴として無形性、保存できない(消滅性)などあげられている。

    • 無形性 (intangibility)
      • 提供されるものが手に触れることのできない、提供者の活動の結果としての効果・効能→価格決定の困難さ
    • 異質性 (heterogeneity) – サービス品質の差が起きやすい
      • 同じサービスでも、提供する人、提供される場所、利用者の置かれている環境や心理状態により、サービスの効果や利用者の受け止め方が異なる
    • 同時性 (inseparability) – サービスの実施と消費が同時
      • 生産と消費が双方向的に、時間的・空間的に同時に起こる→サービスの品質の事前チェックが難しい 
    • 消滅製 (perishability) – 在庫ができない
      • 在庫不能、需要の変動を製造業よりうける

    これらの属性は頭文字をとってIHIPと呼ばれている。サービスに共通の属性があるならば、それを基礎にサービス・サイエンスを構築していくことが可能になる。しかしながら、Lovelockらによりこれらすべてを満たさないサービスがあることが示された。



    となると、サービス・サイエンスは何を基礎に作ればいいのであろうか。Optionとして、これらIHIP以外のサービスに共通な属性を探す、或は、サービスは物と別途扱うのではなく、一部のケースとして扱う、あるいは。。。


    現在支持されている理論はSteve Vergoらによって提唱されたService Dominant Logic (SDL) と呼ばれる。SDLに対する概念としてGDL (Good Dominant Logic) がある。それらの対応表を下に示す。




    SDLはLogicというよりもシステムをとらえる視点と考えるとよい。SDLによると、サービスとはお客様と価値を共創する活動である。サービスをサービス・システムとして表す。すると、サービス・サイエンスとはサービス・システムの研究ということになる。身の回りの現象をサービス・システムとして捉え、科学・工学・マネージメントの知で奥深く考察することにより新しい何かが見えてくるかもしれない。